パーキンソン病について知りたい

パーキンソン病とは

ふるえ、筋固縮、身体の動作緩慢、歩行が小刻みでゆっくりになる、転びやすいなどの運動症状を主体とする、神経変性疾患です。
1817年イギリスの開業医ジェームズ・パーキンソンが初めて報告したことからこの病名がついていますが、古くは古代インドの医学書アーユルヴェーダにもこの病気の記述がみられています。
患者数は人口10万人あたり100~150人とされ、50代~60代に発症することが多いため、人口の高齢化に伴い患者数は増加しています。
わが国では女性に多い傾向ですが、欧米では男性に多い傾向があります。中には40歳以下で発症する方もいて若年性パーキンソン病と呼ばれています。
パーキンソン病は通常、遺伝性ではありませんが、約10%程度は家族性の方がいて、遺伝子異常が次々とわかってきています。

ウィリアム・リチャード・ガワーズ
『神経系疾患マニュアル』(1886年)に
記載されたパーキンソン病のイラスト

発症原因

パーキンソン病の患者さんの脳では、中脳の黒質という部位のドパミン神経細胞が減少しています。
ドパミンは神経伝達物質の一つで、この減少により運動がスムースにできないなどの症状が現れます。
ドパミン量が健常人の10~20%以下になると初めてパーキンソン病の運動症状が生じるといわれ、この時にはドパミン神経細胞数は半分以下になってしまっていることが知られています。
ただ、何故ドパミン神経細が変性していくのかはわかっていません。
亡くなった患者さんの脳を顕微鏡で観察すると、変性したドパミン神経細胞内にレビー小体という構造物が認められます。
これはαシヌクレインというたんぱく質が凝集したもので、この凝集物が蓄積し神経細胞が変性していくものと今は考えられています。 また近年では、脳・脊髄などの中枢神経系のみでなく、さまざまな臓器を支配する自律神経系に広汎な変化が見られることが分かっており、パーキンソン病は「全身病」ということができます。

当院で亡くなられた患者さんの病理組織

パーキンソン病の主な症状

運動症状

振戦、固縮、無動、姿勢反射障害が4大症候といわれています。

振戦 - 手や足,顎がふるえる

ふるえには、安静時振戦と姿勢時振戦があります。
パーキンソン病では静止時にも、安静時振戦と呼ばれるふるえがでるのが特徴の一つです。安静時振戦は、緊張や作業により増悪します。
動作をした時や同じ姿勢を維持した時に出てくるふるえは、姿勢時振戦といいます。
パーキンソン病の姿勢時振戦には、動作を開始すると止まり、同じ姿勢を保持すると改善し、その後また出てくるという特徴があります。

固縮 - 筋肉がこわばる

力を抜いた状態で、他者による関節の曲げ伸ばしにより、感じる抵抗を固縮といいます。暗算や他の運動により、強くなるのが特徴です。医師の診察で確認されます。

無動 - 動きが遅くなる

様々な動作がゆっくり、小さくなります。はじめは手先の動作緩慢が発症することが多いです。
次第に範囲が広くなり、寝返りや立ち上がりなどもゆっくりとなり、日常生活に影響します。
四肢以外の無動では、表情が乏しくなる仮面様顔貌があります。声が小さくなったり、書く文字が小さくなったりするのもよくある症状です。

姿勢反射障害 - バランスがとりづらくなる

立ち上がったときや歩行時の方向転換時にバランスを崩すことが多く見られます。
診察室では、後ろや前、横方向に担当医が押して、足がでる反応があるか、また足が3歩でる間にバランスを立て直すことができるかを観察します。

姿勢障害

腰が曲がってひどい前傾姿勢になることを腰曲がりといいます。
左右どちらかに倒れたり、首が下がったりすることもあります。

歩行障害(小刻み歩行,すくみ足,加速歩行)

歩幅が小さくなることを小刻み歩行といい、歩行開始時のすくみをすくみ足と呼びます。
歩行途中にコントロールを失い、足がとまらなくなる加速現象がみられることもあります。

非運動症状

パーキンソン病には運動機能障害以外にも様々な症状があり、それらをまとめて非運動症状と呼びます。

立ちくらみ

心臓や血管に分布する自律神経の作用が弱まることで、体位変換で血圧が維持できず、立ちくらみやめまい、失神をおこしたりすることがあり、これを起立性低血圧とよびます。

排尿障害

夜間頻尿ではじまることが多いのが特徴です。排尿機能が障害され、尿が膀胱内に貯留したまま排泄されづらくなることがあります。

便秘

パーキンソン病で多い症状です。下剤や浣腸が必要になることがあります。

睡眠障害

入眠困難や途中覚醒が多いのが特徴です。レム睡眠行動異常という、昔でいう夢遊病も合併しやすいことが知られています。

抑うつ

パーキンソン病のうつでは、気力がなくなったり(アパシー)、興味や喜びの消失したりする(アンヘドニア)などの症状が多いのが特徴です。

幻覚、精神症状

幻覚のなかでは、幻視が最も頻度が高く、大部分を占めます。虫などの小動物であることが多いようです。進行期になると精神症状が薬剤により誘発されることもありますが、病気の進行で認知症の症状として出てくることもあり、注意が必要です。

感覚障害、いたみ、しびれ

早期より見られるものに嗅覚障害があります。嗅覚障害にともない、時に味覚も低下することがあります。食欲が低下し、体重が減りすぎないよう注意する必要があります。腰痛や足のしびれ、痛みも多い症状です。原因としては、変形性関節症や腰椎症の症状が、姿勢異常や無動により強く出てしまう場合や、筋の緊張が異常に強くなることで痛みが出るオフ時ジストニア、寝返りが減ることで生じる夜間の腰痛など、さまざまな原因があります。

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