Anesthesiology

医師一覧

職名/医師名 専門分野 認定資格 卒業年 外来診療日
手術部長
佐藤 暢夫
麻酔科 日本麻酔科学会専門医
麻酔科標榜医
1988年  

麻酔を受けられるあなたへ

弊院の麻酔科では、手術の目的で麻酔を受けられる患者さんに、あらかじめ小冊子をお配りして麻酔についての予備知識を深めていただけるようにしています。

多少難しい専門用語もありますが、あなた自身が近く手術を予定されている場合だけでなく、家族にそうした方がおられる人、また一般的な興味のおありの方、皆さんとにかく一度読んでみてください。(ただし弊院で行われている手術は、呼吸器外科・機能脳外科・整形外科で対象患者は主として成人であることをお断りしておきます。)

ここでは、小冊子の内容をご紹介いたします。

はじめに

このたび手術を受けられることになり、いろいろご心配のことと思います。手術に際して、“麻酔”が必要なことは、おわかりのことと思いますが、実際何をするのか、何となく不安な方が多いのではないでしょうか?

そこで、皆さんのそんな不安を少しでも解消し、あなたの麻酔をお引き受けするわれわれ麻酔専門の医師(麻酔科医)の仕事を、知っていただければと考え、この小冊子を作りました。

手術の前日に、担当麻酔科医が、あなたの病室に麻酔前の診察と説明にお伺いします。前もってこの小冊子を読んでいただいていると、話の内容がわかりやすくなると思います。ご家族の方も、一緒に目を通していただければ幸いです。

どうして麻酔が必要なの? 麻酔科医は何をしているの?

手術中の痛みをさまざまな”麻酔薬”を使って取り除くことはもちろんですが、手術中の呼吸・血圧・尿・体温など、あなたのからだの大切な働きを監視し、良い状態に保って、手術がスムーズに行われるように、執刀医とは全く別に、麻酔の開始から終了まで、常にあなたの傍らにいて集中的な仕事をしているのが、わたしたち麻酔科医です。

十分な麻酔のもとでの手術による治療が、あなたにとって必要であることはいうまでもありませんが、麻酔・手術ともに一時的には、あなたのからだに負担を及ぼします。その程度は、病気自体、体力、手術内容によって一人一人違います。麻酔の仕事の本質は、手術によってあなたが受けるからだの負担を、いかに少なくしてさしあげるかにあります。

最近の麻酔技術や薬剤の進歩、安全のための各種モニタリングの進歩などにより、麻酔の安全性は向上しており、手術中に危険な合併症(たとえば心停止など)が起こることは、非常に稀なことです。ただし、医療の分野では麻酔も例外ではなく、100%の安全性を保証できないことをご承知おきください。

万一、麻酔・手術中に予期せぬ事態で急変を生じた場合には、可能な限り、速やかな回復をめざして、適切な治療を行えるように、万全の備えを心がけ、最善を尽くすのが麻酔科医です。

麻酔の前に  -安全な麻酔のための準備は入院時から-

安全な麻酔を行なうためには、"麻酔の前に"調べておかなければならないことがいくつかあります。今回の手術となる病気以外に、術前検査などから、あなたの全身状態を十分に知るように努めます。時には、より正確にからだの働きを知るために、特殊な検査をお願いすることもあります。つまり、あなたの体力の貯金を調べるのです。少しでも呼吸の働きを高めるために、数日間呼吸訓練をすることもしばしばです。貧血の強い人は、術前に輸血をお願いすることもあります。またあなたが、麻酔上高いリスクを有している場合は、手術方法も含めて関係する各科の先生方と十分検討する必要があります。こうして、あなたにとって一番望ましい麻酔が決められるのです。

ところでこの先をお読みになる前に、もしあなたがタバコを吸われる場合、(入院案内で禁煙を指導されたと思いますが)すぐに禁煙してください。このまま喫煙していると、術後肺炎などの合併症が起こりやすくなります。

麻酔前問診票について

入院後、病棟看護婦がお渡しする麻酔前問診票には、麻酔に関するあなたへのいくつかの質問が書かれています。今までにかかった病気、持病、首・手足の動きや感覚の障害、日頃飲んでいる薬、食物・薬での異常反応の経験、あなたの身内で麻酔・手術を受けて異常反応を起された方の有無、などについてできるだけ詳しくお答えください。お答え次第で、麻酔方法や、用いる麻酔薬を変えなければならないこともあります。

担当麻酔医の麻酔前診察および説明  -手術前日-

特別の事情(緊急手術など)がない限り、実際にあなたの麻酔をかける麻酔科の医師(担当麻酔科医)が、あなたの病室にお伺いして、簡単な診察をいたします。あなたの麻酔についての具体的な説明(麻酔方法と麻酔上の問題点について)もします。この際、麻酔について疑問があれば、遠慮なく質問してください。そして麻酔につて十分ご理解いただけたら、その場で必要書類に麻酔同意のサインをしていただきます。

※ところで、手術前日に少し風邪気味の場合、手術当日の朝の診察結果から、麻酔の安全性を最優先に、手術の中止をお願いすることもあります。

手術前夜

明日の手術のことをあれこれ考えて眠つかれない人もいると思います。麻酔科から睡眠薬を出しておきますので飲んでください。(眠剤を常用している人はいつもどうりに飲んでください)食事・水分の制限についての指示は、厳重に守ってください。胃のなかに内容物が残っていると、麻酔中に吐いて大変危険です。

麻酔はこうして始まり、そしてさめる  -手術当日-

病棟で

日頃飲んでいる薬のうち、当日朝も飲んでいただきたい薬(降圧剤など)がありますので、看護婦の指示にしたがって飲んでください。手術の開始時刻やあなたの全身状態により、あらかじめ病室の方で点滴をとることもあります。手術室に向かう45分前に、麻酔前投薬として、薬を飲んだり注射をしますが、内容は人よって違います。また場合によっては前投薬のないこともあります。手術を待つあなたの不安を少なくし、麻酔の副作用を防ぐのが目的です。少し脈が早くなったり、喉が渇いたり、また少し眠くなる場合もあります。術前の全身状態が良い患者さんは、元気に自分の足で歩いて手術室に入ってもらうことも最近行っています。

手術室で

手術室を暖め、音楽を流してあなたをお待ちしています。あらかじめ、あなたからテープやCDをいただいて、お好きな曲をおかけすることもできます。まず心電図や血圧計をつけ、点滴をとります。(人によっては、より正確に血圧や心臓の状態を知るために、局所麻酔をして、手足の細い動脈や首の静脈に細いカテーテルを入れることがあります。)この後に麻酔を開始します(小児の場合は少し異なります)。

~ここで麻酔の種類について簡単に説明しておきましょう。~  (実際のあなたの麻酔方法については、術前診察の時にお話します)

麻酔には、全身麻酔と局所麻酔とがあります。開頭術や多くの開心術では全身麻酔だけで、また足の手術などは、脊椎麻酔や硬膜外麻酔などの局所麻酔だけで行なわれることが一般的です。開胸、開腹術をはじめとする多くの手術では、術後の鎮痛も考慮して、全身麻酔と硬膜外麻酔の併用が一般的に行なわれます。

硬膜外麻酔は、脊髄を取り巻く硬膜外腔という狭い空間に、局所麻酔薬を注入し、脊髄からでている一定範囲の神経を麻酔する方法です。この麻酔の時は、横向きに寝て、膝頭を抱え、背中を十分に丸めます。著しい背骨の変形などがなければ、10分以内で終わります。背骨の隙間から細い針を刺して、細いチューブを入れます。この間急に動いたりすると危険なこともありますので麻酔科医の指示を守ってください。このチューブは硬膜外腔に5cmくらい入っていますが、術中術後を含め数日間入れたままでも問題はありません。(ペインクリニックとして数か月いれたままでも大丈夫です。)術後急性期の集中的な疼痛管理が不要になった時点で、病棟にて抜きます。

  • ※硬膜外麻酔の合併症としては、硬膜穿刺、硬膜外血腫、膀胱直腸障害、各種神経麻痺などが報告されていますが、その頻度は低く、施行にあたっては、慎重に行ない、万一これらの合併症が発生した場合は、適切な処置をします。

脊椎麻酔は、くも膜下腔に局所麻酔薬を注入し、脊髄に直接作用して麻酔効果を得る方法です。硬膜外麻酔と同じ体位をとりますが、通常は穿刺時に注入した薬が効いている間(およそ2時間)だけの麻酔です。従って予想以上に手術が長引いた場合には、全身麻酔に切り替える事もあります。

  • ※脊椎麻酔の合併症としては、高位脊椎麻酔、脊椎麻酔後頭痛などがありますが、予防的配慮(後者では細い針を用いて、手術当日は起き上がらないようにする)、とともに発生時は、適切な処置を行ないます。

出血傾向(血が止まりにくいなど)がある場合は、硬膜外麻酔、脊椎麻酔は施行できません。

脊椎麻酔や硬膜外麻酔だけで行なう場合は麻酔が効いてくると暖かく感じたり、しびれたり、動きが鈍くなったりしてきます。当然痛みも感じません。この作用は、一時的で数時間で元に戻ります。状況によっては、適度の鎮静薬を併用することもあります。

それではいよいよ全身麻酔を開始します。(硬膜外麻酔を先に行なった場合は、ここで再び仰向けになりますが)通常は、3~5分くらいマスクで酸素を吸った後、点滴ラインより麻酔薬を投与しますと、1分以内に意識がなくなります。(時には、最初からマスクで麻酔ガスを吸入して意識をとることもあります(子供ではこの方が一般的ですー従って子供では意識が無くなってから点滴のカテーテルを入れます)。これから先は、麻酔薬の投与を中止するまで一切の苦痛を感じません。ただし実際は、まだ麻酔の準備が続きます。十分な麻酔状態で、口または鼻から気管にチューブを入れます。(気管内挿管)

  • 気管内挿管
    このチューブは、吸入麻酔薬を投与したり、手術や麻酔で影響を受ける呼吸の補助に欠かせないものです。このチューブを入れる際、細心の注意を払いますが、緩い歯や虫歯があると損傷することがあります。このチューブは通常手術終了直後、麻酔がさめてから抜きます。チューブが入っている間、声は一時的に出ません。抜いた後、入れていたチューブの刺激で喉が痛かったり、声がかすれたりすることがありますが、普通は2~3日で回復します。手術前に少し風邪気味のような時は、喉の症状が悪化することがあります。場合によっては、気管内挿管ではありませんが、ラリンジアルマスクやコパという特殊なチューブ用いることもあります。 ※特別な場合(手術の内容や麻酔のさめ具合から、しばらく呼吸の補助が必要な時)、麻酔終了後もチューブを入れたまま、病棟(ハイケアユニットなど)で引き続き呼吸管理を続けることがあります。(弊院には独立したICUはありませんが、それに準じた治療を施行しています)

その後は、麻酔の深さを適切に調節しながら、麻酔科医は手術終了まで呼吸や血圧などの監視の手を緩めません。 手術終了後、麻酔薬の投与を中止すると、通常数分~20分で醒めてきます。しかし、麻酔のかかりやすさと同様に、さめやすさも、手術時間や全身状態などにより、個人差があります。さめぎわに、麻酔科医があなたのお名前をお呼びします。「〇〇さん、目を開けてください。右(左)手を握ってください。深呼吸をして下さい。」等の呼びかけをしますので、それに応じた動作をしてください。

あなたからの十分な応答が得られたなら、気管のチューブを抜きます。さあもう声も出ますよ。その後もしばらくあなたの呼吸状態をはじめ、全身状態を監視し、異常が無いことを確認してから、病棟(通常、当日は術後管理の充実したハイケアユニット)に戻ります。これで一旦、手術室での麻酔は終了します。

  • ※ところで、出血を伴う手術も少なくありませんが、最近は、輸血を一種の臓器移植と考え、あらかじめ患者さんの同意をえて輸血を準備し、しかも原則として必要最少限度の使用にとどめる方針をとっております。さらに輸血による副作用を避けるために、必要に応じて放射線照射済みの血液を準備しています。

麻酔からさめると痛い!?

手術後の痛みへの対応?病棟で

安心してください。硬膜外チューブが入っている時は、さめる前に鎮痛用の薬を投与しておきますから、目がさめたとたんに、辛い痛みに襲われる心配はありません。(薬がなくなったら追加できます。)しかし効果が不十分な場合や、硬膜外麻酔を用いていない場合は、他の痛み止め(坐薬や注射薬)を組み合わせて、不愉快な状況を、可能な限り取り除くように努力します。痛みをコントロールして、深呼吸や痰を出すことが上手にできると、術後の肺の合併症も少なくなります。手術前にしっかりと呼吸訓練をした人は、ここでその成果がでます。時に硬膜外鎮痛薬として一般的に用いられる麻薬による痒みや悪心・嘔吐また排尿障害などを生じることがありますが、状況に応じて対処します。

術後麻酔の影響は?

担当麻酔科医の術後回診

あなたの担当麻酔科医は手術終了後も、当日はもちろん術後数日間、鎮痛状態はじめ麻酔に関連した影響について観察しています。病室に伺って、あなたにいろいろな質問をしたり、検査データを検討します。そこで異常がなければ、安心していただけると思います。この時期何か心配なことがあれば、聞いてください。

麻酔のリスクと合併症

麻酔をかける上でのリスクとは、一般的には次のような場合です。

高血圧、糖尿病、喘息、貧血、極端な肥満・痩せ、狭心症や弁疾患、長年の喫煙、慢性呼吸疾患、急性および慢性肝炎、肝硬変、慢性腎不全、極端に顎が小さい・口が開かない・頚が良く曲げられないことから生じる挿管困難、痙攣疾患、脳梗塞、長い寝たきり状態からくる心肺機能の低下、向精神薬を大量に長く飲み続けていること、特殊症候群、慢性関節リュウマチ、ステロイドの使用、アレルギー、血が止まりにくい状態などです。

また手術内容上、長時間手術、特殊な手術体位、中等量以上の予想出血量、一時的血行遮断に伴う重要臓器障害の可能性、手術手技に伴う換気障害の発生、予防的人工呼吸の必要性などは、麻酔管理に影響する重要な問題を生じます。

  • ※今のあなたにどのような問題があるかについては、術前診察に伺ったときに詳しく説明し、さらにその内容を書いた文書をお渡しします。

麻酔中に起こり得る合併症には、気道閉塞や気管支痙攣、異常な高血圧や低血圧、重篤な不整脈、アレルギー反応(最も重症な場合はアナフィラキシーショック)、悪性高熱症、心停止、神経損傷、突然の大出血(手術操作上)・嘔吐など極めて稀ではありますが、起こり得ます。仮に上記のような合併症が生じた場合、速やかに適切な治療を行ない、全身状態の改善に努めますが、極めて重篤で手術の続行が好ましくない場合は、担当外科医と相談のうえ、手術を中止することもあります。いかなる状況でも麻酔科としてはあなたの生命の安全を最優先に考えて行動します。またあなたの覚醒後にその発生状況と治療についてきちんと説明いたします。

最後に

以上今回麻酔を受けるあなたに、一般的な麻酔についてあらかじめ理解してほしいことを説明しました。お分りいただけたでしょうか。
麻酔に関して何か不安に思うことや疑問がありましたら、遠慮なく担当麻酔科医にお尋ねください。

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